3層の空

暦というのはもしかすると、この世でいちばん信頼に足るものであるかもしれない

冬至を過ぎてから2ヶ月経ち、日没時間が日に日にうしろへ更新される。

今時期は、17時10分くらいに太陽が山の彼方に沈んでいく。

けれども冬の終わりの残光は太陽が見えなくなってもしばらく空を明るく照らし

暗がりこそあれ、かすかな光を雲が集めてとどめている。

鳥影すらくっきりと見える夕方に在り、先ほどから面白く空を見上げている私は地上。

 

冬と春とのはざまである。

上空では、雁の群れが

中空では、白鳥の群れが

低空では、烏の群れが

皆、北の方角に飛んでいく。鳥にとっては夢のようなねぐらでもあるのだろうか。

 

カラスは鳴き声やかましく、目的地だけは同じくしてみな無秩序に飛び交わす。

彼らの羽音もよく聞こえる。ばたばたと羽ばたかせる音が私の耳に直接こんなにも聞こえるというのは、

鳥界の数多の鳥と比べればそれほどよい翼をもっていないのかもしれない。もっとも人間に近き鳥。

 

白鳥は、4~8羽で連れだって飛んでいく。

あの白いからだは、日の落ちた曇り空と同色だけれど

あの声を頼りに目で追えば、でかいフォルムが飛んでいく。飛行に不似合いな長い首。

カラスの声は人間同士の会話のノイズに近しいが

白鳥は、アコーディオンの和音の音楽。

 

月にもっとも近い上空を飛び交う雁の矢印は、

やはり一番遠いからか鳴きかわす声も時間差で空からおりてくるよう。

記号化された電子音のように、彼らだけの法則がある。