梅雨入りや 荷一つ軽き入所の母
尊敬する祖母が、2ヶ月半の入院を経て
そのまま施設に入所してしまった。
数年前に腰を骨折し、昨年夏には熱中症となってからこっち
ぱたぱたぱたと体調をくずし小康にあった。
去年はさんさに行けたんだよねえ、
と夢に吐息を残すように母は言った。
3月半ばに原因不明の下痢が続き、
病院を転々としようやく入院が叶ったのも束の間で
全快万々歳の退院とはならなかった。
退院手続きと入所手続きで終日費やした母は、
その日の夕方過ぎに私に一片の紙を手渡した。一句あり。
梅雨入りや 荷物は一つ 入所の母
この句でいうところの「母」とは私の祖母にあたるが
私の母であるところの母は
深い悲しみにくれるときこういうところがあるのだった
数年前に犬のぶんが突然亡くなったときも母は句を詠み、
私とああでもないこうでもないと推敲をしながら
迫る情動を十二字に結んで悲しみを癒した。
母が句を詠んだのは、そのとき以来であった。
そして私は少しだけ手を加えて冒頭の句を返したのだった。