ハンティング

先日、トチノキの並木道を穂の名と歩いていたら、
ど派手な羽音が聞こえてきた。
バサッバサッくらいであれば聞き慣れぬ音でもないので、どうせ鳩か何かだろうと気に留めることもなかったが、
羽根が風を割くときのびゅうびゅううなる圧の音もはっきり聞こえてきたので思わず顔を上げた。

すると案の定、若いカラスが私の頭のすぐ上を低空で飛び去ってゆくのである。
穂の名がまた何かしたかしら。
確かに、あなた方を見かけるたびに悪意なくただいたずらにワンワン吠えにゆくけれど。

そんなことを思いながら、穂の名と同じ角度で頭をもたげていると、
低空飛行しているカラスは一羽だけではなく、
トチノキの枝葉の陰からも仲間と見られる黒い影数羽が勢いよろしく何やらバタバタやっていた。

そのまま足を留めたのは、そのカラスたちの飛び方の軌道がいつにも増してトリッキーに見えたからであった。
その証拠に、穂の名ですらもいつもとは違う反応を示し、
なんだなんだ?とカラスの一群を目で追っていた。
トチノキの枝葉のあいだを彼らカラスにしては高速度で乱飛行しているのである

そのときである。

じじっじじじじぎゃじじじじじぎゃ
ぎゃぎぎぎぎぎぎぎ

何かが仕留められた音がして、そちらを仰ぎ見れば
先ほど滑空していたカラスが嘴の先にしっかりとセミをくわえていた。

カラスの太い嘴に対比して見ると、虫のなかでもセミは案外大きいなあなどと
呑気に見上げていると、
他のカラスが、セミに向けてなのか鬼ごっこの勝者たるこのカラスに向けてなのか
かあーかあーと鳴きかわし始めた。

会話というよりも、野次というか、かけ声というか。
なぜか、スポーツにおける「ナイスプレー!」のようなエールまたはブーイングに近い印象を受けたのは
カラスたちがセミハンティングに興じているように見えたからだろう。
(別にカラス語に精通しているわけではない)

知能がある動物であるほどよく遊ぶというが、
確かにこの日のカラスたちは、自分たちでルールをつくって遊んでいた。

カラスを飼いたい。