雪が降る。
その雪原を獣らが踏みつけ移動していく跡が残って初めて
私たちはそれらの存在がいたことをようやく視覚で知ることができる。
だが犬どもは雪が降らずとも嗅覚だけでこれらの気配を知っている。春、夏、秋、冬、朝夕晩夜いつだって。
今日のように気配が去って数時間経ったあとでも問題なく。
鹿やカモシカ、たぬきかきつね、ウサギやねこ。
今、どこにいるか。
すぐそばにいるかどうかは、穂の名の反応や行動を見ていればすぐわかる。
距離の遠近。対象の大小。その他もろもろ。
それで、ああ、おそらくこちらの方向に多分カモシカがいるんだろうな、と気が付いた。
太古、私が槍をこさえて常日頃から持っていたら、
ここぞとばかりに獲物を追って穂の名とともに駆け出すのだろうか。
こうして犬と人との関係の始まりを想像するのも面白い。
とはいえ、犬もよりけりである。
すっかり猟犬種スイッチが入っている穂の名の横で妹アウラはただ真似っこごとをするだけであり
獣の匂いに反応も示さず(少しは入念に嗅いではいたか?)
とにかく私や穂の名と行動ができることが嬉しそうでニコニコしている。可愛いこ。