ひまわり

私の野生の庭に、ひまわりが花を咲かせた。

伐られたユリノキの根元に一輪と、世帯主不明の土だけ入った植木鉢に一輪。

つぼみをつけるまでは、「あの茎や葉はひまわりだ」と言われても半信半疑だったが

太陽の権化みたいな黄色の花びらを見ればまちがえようもない。

(そもそも太い茎と手の平ほどの大きさの鋸縁の葉が互生にのびる植物は他にそういまい)

眩しげな千の眼差しを黄色く長い睫毛の底に隠した罠のように伏せたつぼみ。

 

おそらく、野鳥の糞の落とし物に種が入っていたのだろう。

それともリスか何かが大事に抱えてうめたのだろうか。

今年はじめてやってきたとは限らない。ずっと、何年も前から機会を伺っていた可能性もある。

ユリノキが伐られ、日中ほとんどの時間を太陽を浴びて過ごすことができるようになったためにようやく準備ができたのかもなどと。

来年も咲いてくれるだろうか。

(昨年咲いていた、透きとおる緑がかったオダマキは今年は咲いてくれなかった。気に入っていたのに)

 

穂の名は、大蜂(スズメバチだろうか)と正面衝突し、以来

わが庭に危機感をおぼえ、「こわいやつがいる」と認識したらしい。

幸い刺されてはいないのだが、顔にぶつかられた衝撃は

一介の羽虫と言えど大型犬を躊躇させるに十分だ。虻くらいであれば、ばくばくと空気に食らいつくようにして遊んでいたのに。

ぶつかってすぐ、しっぽを下げてしょんぼりとして家に戻り、絨毯のようなフセを決め込んでしまった。

名前を呼んでもウンともすんとも反応しない。

「穂の名、すべて。忘れなさい」と声をかけた日。

 

 

 

ひまわり