個性

 

畑で穫れた丸大豆から、今年も味噌を仕込むのだそうだ。

目を悪くした祖母を助けるべく、丸大豆の一粒一粒の良不良の選別を私もやることになった。

 

丸大豆。クリーム色をしたきれいな球体。

夏に苗床として使用していた長方形の平たいプレートに適当な量の丸大豆をあけて、一粒一粒自分の目で確かめる。

今日は外での作業日和。雲が少なく、太陽の日差しが温かくて気持ちがよい。秋の陽気。

プレートの上の丸大豆を転がす。ころころころころ、とても素直だ。上に下に右に左に無邪気そのままに転がってくれる。小さい頃、こういうシンプルなおもちゃが好きだったな。

 

色・形ともにきれいな状態の丸大豆だけ、味噌にする。良というやつ。

中が腐っているもの、生育が悪く色が悪いもの、虫に食われているものははじく。不良用のビニル袋に捨てられる。

 

合わせて2升超の丸大豆がとれた。味噌をつくるには十分だ。やわらかな色味がふっくらとしていてとても可愛らしい。美味しい味噌になりますように。

 

祖母が道具を片付けはじめる。私はそれを知りつつ、不良用のビニル袋に手にのばす。中身を全て、選別用プレートに再びあけるために。気まぐれにそうしたのではない。先ほどの手作業の中で、私はすっかり「不良」といわれた丸大豆たちに心を掴まれていたのである。

色が悪いとされるもの/淡白。薄黄。黄緑。薄い紫。濃い紫。黒っぽいもの。だいたいは小粒なものも多い。

虫に食われているもの/丸大豆のかじられ方、傷み方はそれぞれで、丸大豆を食していたのは一種類の虫だけに限らないことがわかる。先端からがじがじと食われて欠けているように見えるもの。カミキリムシのような強靱なあご?それともジバチの幼虫のようなもそもそとした口?中央に線が入ってぱっくり割れているものもある。割れ目の奥には何かカビのようなものも見られるし、数十ほどの極小の卵の一群がからからに乾いているものもあった。死んだ卵にカビが生えたのかも?そのカビらしきものにもいくつか色の種類があった。中から食われ、空洞になっているものもある。こういう丸大豆は、少し黒ずんでいる。

プレートに並べ、じっと眺めるだけでいろいろな発見がある。人間側の目的がなければ良も不良もないものたち。

何という個性の集まり。離れがたい魅力。

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