アブラゼミのからだを食らうスズメバチ。
肉食であり、刺されればともすると人間の私さえ命が危うい。
今だって、撮影している私のそばで他の数羽がブンブンと唸りながら飛びまわっている。
それでも私は目を離せない。
肉食動物の食らいつく夢中と、その代償に魅せられる。
代償とは生存の隙。
今、駆虫剤を噴射すればこいつらは一たまりもないだろう。
私に気づいてさえいない。気づいていても、目の前の肉の魅力に勝るものはない。
背後をとった私はいとも簡単に勝てるだろう。が、それも私は許せない。
そこで私はスズメバチがさらに集ってくるその前に
野生の魅惑の一瞬間に見て見ぬふりをし、立ち去った。