春の便り

・コブシ

門の前の私道に飴の包み紙が散乱していて、

昨夜の大風のせいにしろ、誰がこんなにゴミを捨てたかと憤懣したが

コブシの白き花びらだったこと。

 

・桜

私の赤い車に、隣家の桜の散った花びらがふんだんにかかってある。

ああこれは、茶色くこびりついたらとれないぞと思えども

何となくもったいなくてそのまま車道に出た。

走る私の車体から、桜の花びらが後ろへ後ろへ旅立っていく。

自分は桜を吹かせる風のように思えた中央線そばの真昼時。

赤いフリード 桜吹かせて わたしは風

 

・イワウチワ

昨年の今頃に植えたイワウチワ。

どうしても根付いてほしくて、そしてあの美しい花をこの庭で見たかったので

イワウチワの育て方なる商品説明に記載されてあった生育環境を

聖典のように遵守して選んだ場所に植えたのだが。

花やつぼみどころか、あの葉ですら見当たらない。

秋にはまだ健在であったから、重たい雪の冬の日々を越せなかったのだと思う。

一度目の雪どけの頃、心もとない短い根こをあらわにして土から弾かれていたあのイワウチワが

最後の一つであったのか。今更気づいて口惜しい。