ブンと母

ブンと母

この家に来たばかりの頃は、もう成犬に近い大きさで、体重は3500グラム。ちょうどあなたの上の弟が生まれた時と同じくらいの大きさだった。

抱っこしてみて。4キロ近くあるの、3800グラム。こうしていると、あんたたちが赤んぼだった頃を思い出す。あなたの下の弟くらい、一番大きく生まれたのだけど、それと同じよ、今のブンは。

今は年をとっちゃって、随分体重が落ちたけど…。今、あなたが生まれた時の体重よりちょっと軽いくらい。3180グラム…。3000グラムくらいかな。

ブンは、母の腕に抱かれるたびに、こんなことを言われていた。十五年間。新生児と近い数字の体重は、母の心に犬の重さ以上のものを満たしてきた。

私たち三人が進学や就職で家を出たあとも、きっとこうして母の胸を小さな重さでぎっしりとうめ、心を救っていたのだろうと思う。

2400グラムのブンは、母の腕に抱かれて旅立った。

母は涙でぬれた唇をブンの顔に近づける。

その後ろ姿に私の叙情は揺れ動く。

 

私たち兄弟三人も、このようにして慈愛を注がれてきたのだな。

三十数年前の自分自身と母の姿を見たようだった。

八月十二日