羊毛

先日は羊の毛刈りを見学させてもらった。

馬、ヤギ、ヒツジ、牛。

4、5月はいろんな種類の四本脚に縁があり、私は嬉しい。

 

毛刈りをした方の奥さんがウール作家さんということで、

羊毛を洗い、毛糸にするまでの工程を一緒に体験させていただく機会を得た。

どの扉をあけても、世界は面白いものごとで溢れているのだなと改めて思う。

羊毛然り、なんという癒し。

洗い上がって乾いたばかりのわたわたの羊毛の繊維を一定方向にととのえることを

カーディングと呼ぶのだが、私はすっかりカーディングの虜となった。

そして生まれるローラック。

カーディング中は羊毛を優しくいとおしむ気持ちで扱うせいか、

ついつい、私が生んだローラックとまるで母親の顔をして呼びたくなる魅力がある。

毛糸を紡ぐ際はローラックにしておくと、初心者でも比較的やりやすくなるとのこと。

 

今日この日までは、羊毛を雲にたとえることも是としていた私だが、

もうできないなと思ってしまった。なぜなら、と説明する前にまず触ってごらんと言いたい。

 

からむしや木綿などの植物繊維と違って、

刈ったばかりの羊毛には油分(ラノリン)が含まれ、少し触れただけで指先がぬるりとなる。

香りこそないが、ああ、動物だものなあ、動くものだよなあと感じ入る。

羊毛に残った油分を一切洗い落とすか多少残すかは制作物や作家さんの好みによるらしい。

(いわゆるフィッシャーマンズセーターは防水のためにあえて油分を残すとも聞いた。が、とても重い)

 

一番はじめに粉洗剤を混ぜたお湯の中につけ置きをするのだが、

羊毛にまじる土や種、葉っぱの切れ端、枝などを見ると何だか可愛らしく思ってしまうのは私の愛犬を重ねてだろうか。

首まわり、背中、サイド、バック(おしり)と分けて洗ったが、

一番毛質がいいのは首まわりだそうだ。

土が付きにくい背中が一番よいのだろうと思っていたが、背中は紫外線の影響で羊毛がやや傷んでいるとのこと。

あたたかいお湯の中でぷかぷかとゆれる羊毛はふにゃふにゃと揺蕩うてこちらまで一緒に温泉に浸かった気分になる。

つけ置き洗い、乾燥機を何度かくり返し、晴れた日に専用のテーブルに広げて屋外で自然乾燥させる。

水気がなくなると自然とごみなども落ちるが、やはり最後まで目視と手作業でごみは取り除くのだそうだ。

そうしてあの、カーディング前のわたわたとしたウール(羊毛)ができあがる。

握るとかすかにばねのようにぎゅむぎゅむと押し返す弾力があって、

それがまた愛おしい。

 

作業をしながら何度もこんな会話をした。

「このこ(羊毛)はチロル?」

「そう、チロル」

「あれか~」

「チロル元気?」

「元気げんき」

 

屠殺することなく(もちろん食べようと思えば食べられるが)

別の形で恩恵を得られる動物はやはり愛情が増し、親しみが深くなる。

 

社会化に適した2~3か月の子犬と一緒に羊も育てたら素敵なのでは?

羊もいいなあ

 

最後は私の独り言。

 

 

羊毛