キジバト

私の野生の庭には、キジバトのつがいが暮らしている。

ヒヨドリやオナガのようにけたたましくなく、

人間の語り口のような落ち着いた鳴き声をかわし合う。

家の壁一枚を隔てながら、隣人として申し分ない。

ひっそりと静かで、何となくつつましいさまに親しみさえ覚える。

 

彼らがつがいだと知れるのは、どちらか一方がばたばたばたと

大げさな羽音を鳴らして木から木へ飛び立つと、

きまってもう一羽の同じ容姿をした鳥が後を追いかける姿を何度も目にしているからだった。

 

今日も野生の庭に穂の名を放ちつ、

羽音につられ空を見上げると私の真上をキジバトが滑空していた。

おや、と思う。

尾羽が一枚、いや二枚だろうか。足りないのである。

尾羽があるべき隙間から、青空がようく見える。

 

移動に障りはないのかしら。いや、それくらいならまだいい。

人間の目にさえ顕著な欠損(たかが尾羽とはいえ)は野生の中で非常に目をひく弱者の記号になりはしないか。

鋭い牙や爪を有するある者にとっては好機の欠損に見えることもあるのではなかろうか。

 

もう一羽のキジバトもおそらく近くにいるのだろう。

かたわの相方に先行しているのか、しんがりなのかは知らないが。