からむし

 

 

「おらほんとこでもやってたぞ」
機織と草木染めの手習いを始めたと嬉々として喋っていたら、祖父がこう言った。

祖父母が暮らす奥山の端(は)の小さな集落。
この辺りは蚕ではなく、からむしから糸を紡いで織っていたというのだ。
から虫、ではない。イラクサ科の背の高い植物のことだ。
祖父が幼い頃には早くも織り手は少なかったけれど、家族の中に達者なひとがいてよく手元を見ていたと教えてくれた。

盆過ぎに時間を見つけて慌ただしくも立ち寄ったときのことである。

あれから数年。
あのとき「いつかやろう」と決めていたことを
今、やらないと、と思うようになった。

衣食住。
植物に生かしてもらう知恵をからだに備えている人たちがいる。
私の傍らにもそういう人があるのなら、
知りうることを今、たくさんたくさん知っておきたい。

「からむし、どの辺りに生えてるの?」

私はようやく、このことばを祖父母に問うた。
数年ごしの話の続き。

始めてみようと思います。

 

からむし