MAHORA

 

自分というものはある。確かにある。けれども
自分以上のものがあると感じる時、自分はなく
なるのだが、同時に、自分という“そのもの”
があることに気づく。

手のひらに収まる温い本に出会った。美しい場所、すぐれた場所を意味する古語の名をもつその本の中に、この一節があった。

この一節がすとんと落ちる。そのような人間に近づくことができた三十四年分の己の幸福。

八月二十九日