庭でアトリが死んでいた。
ここらにはいくつかの小鳥の群れがいて、
スズメはスズメ、羽ばたいて緑が光ればマヒワ、胸の褐色が光ればその類。
カラスや猫に襲われたのかと思ったが、どこにも傷はなく
春の気まぐれの冷えた小雨の露に濡らして、冷たい体を横たえていた。
弱っていたのかもしれない、朝晩の急激な寒さで命を落としたか。
穂の名は興味本位でクンクンと嗅ぎ、すぐに後ずさってうーうーと喋った(一応鳥猟犬種なのだが)。
もしか、虫や細菌など目には見えないものが原因だったのかもしれないが
からだはとてもきれいなままで、私は鳥という種の美しさに改めて魅了された。
腹の白色、胸から羽根の付け根にかけての濃い橙、頭部から背にかけてのゴマ大福のような白黒斑、
広げてみれば見事な風切り羽。
目は閉じられていてよかったと思う。
このまま庭に放置すれば、それこそ何かの餌食になろう。
この羽根が血の色で飛び散らかるのも、ここの住人としては少し困る。
土に埋めたとて、すぐに誰かが掘り返す。野生の者ならまだしも、うちにはやんちゃなアウラもいる。
ちょうど、犬用のおやつ袋が空になっていたことを思い当たり、
それに入れてやることにした。品質保持のためにやたらと丈夫で、中は銀色。
行く先は結局今日の日のごみ収集車の中なのだが、
それだと弔いにしてはあまりに気の毒な気がして花も足してやる。
こういうとき、何も用意はないけれど少なくとも何かしてやれることはと考えて
その人間の行為の端緒として
「花を向ける」=たむけることはとても身近に感じられてよい。
今時期の岩手は、まだそれほど花が咲いていないのだが、その中で
目についた小さな花々――スミレ、クロッカスを入れてやる。
いいにおいがするから防腐代わりに(?)と、母はアップルミントも入れてやっていた。
袋の中が鏡のように反射していたので花の量は少ないながらも色が増して見え、
その奥でアトリが静かに目を閉じる。