探偵

聞き慣れぬ声がして、見上げれば真上に鳥。

腹から尾(の裏側)にかけては白。

羽根の色、この角度から見るとタキシードを着ているように黒に見える。

特筆すべきは、尾の先端のエム字と、のどの下のオレンジ色、または明るい褐色。

「ツバメか?」と思うがあまりにも季節外れ。

でも、もしかしたら?

何万羽というツバメの中のたった一羽くらい、道を間違えたり迷子になったり

あるいは自分の意志で道を外れてちょっとこの地に立ち寄ることだってあるのかもしれない…?

いやいや、たとえアウトローのツバメだとしても

生き抜きたければわざわざここでなくともよい。春寒しならば食うものもない。

「ツバメ…ツバメか…?」

そんなことを思っているうちに、ツバメ疑惑の何某は飛び去った。

ふいーんふいんと波状飛行。軌道はゆるやかに何度も曲線を描いてやや落ちるようにして飛んでいく。

 

「波状飛行…波状飛行か?」

ツバメの飛び方じゃない。やつらが描く軌道はもっとモダンな曲線というか、

昨日の何某のような緩慢な波状はしていない。英語のスワローの音がよく似合う曲線をしているはずなんだ。

それに、あのエムの尾羽だってツバメと似ても似つかない。

ツバメの尾はもっとこう、ひゅんと長くてかっこいい。

 

鳥図鑑をひらき、「エム字の尾…エム字の尾…エム字の尾…」

目を皿にして、鳥の尻ばかりを見る。

 

アトリ…アトリかなあ?