・アカゲラ
穂の名のための半野生の庭にて、今年もアカゲラを目撃。この庭にやって来るかぶきな彩りを私の両目は逃さない。
幹を直立にてんつくてんてんと弾みながら進むさま。何とも舞台映えするではないか。
・ジョウビタキ
今や、わが半野生の庭で一番背が高い木は、幹のか細い古参の一本杉。
屋根と屋根の間に阻まれて、ただまっすぐにのびるしかなかったようだ。
その先端の方、私の首を曲げるだけでは仰ぎ足りず、朝のからだを伸ばしがてら
からだを反らせてようやく見渡せるほど高いところから声がする。
一定のリズムで、特に華やかでもない単音を、ひよ・ひよ・ひよ・ひよとくり返す。
おしゃれなスマホに充電器を差し込むときのような電子音にも似ているヒョン・ヒョン・ヒョン。
長らく謎だったが、先日YouTubeで春の鳥特集を見ていたら正体がわかった。
ジョウビタキ。漢字も覚えて尉鶲。尾の色だけがつつましくオレンジ。
・つぐみ
先日庭で死んでいたアトリ。手っ取り早くその場でグーグルレンズで検索してみたところ
グーグルさんは「コレハツグミデス」と答えてくれた。
その数日後、公園で本物のつぐみを見かけたが、確かに少しだけ似てなくも、ない。
でもつぐみは顔に白いライン、胸は赤褐色ではなく、黒白のまだら。
頭部~背にかけて上から見れば、まあ間違える理由もわからなくはないが。
AIではなく鳥図鑑派といまだ豪語したい。
・キジ
犬を散歩していると、時折キジにいらっとすることがある。
なぜぎりぎりまで逃げないのよ、と。
早く飛び立ってくれないからほら、うちのこが、こんなに興奮しちゃったじゃないの。
穂の名だけじゃない。
先日も、ただでさえ引っ張り癖のある保護犬トムが余計にむきむきの力持ちになって引っ張るものだから、私は文字通り一所懸命にふんばり尽くして、くたびれた。
そのときは何に対してスイッチが入ったの?と思っていたが(人間の私には気配もにおいもわからない)、トムが茂みの中に半身をいれる寸前になってようやく逃げ去っていったもの――それがキジだった。
ほら、やっぱり君だよキジ。なぜこんなにぎりぎり危なくなるまで逃げないの?
おかげでトムちゃんが君恋しさにまだきゅんきゅん鳴いているじゃないの。
そう思いながら、
腹立たしげに雪の上に残されたキジの足跡の多さを見たら、なんだかすっかり許してしまった。
きみたち、こんなに助走をしないと飛べないってことなのね。と。
思い返せば、どのキジも、畢竟逃げるには逃げるが、飛ぶのではなく必ず駆ける。
もって生まれた翼を使うことがめったにない。
よほど足に自信があるのか、それとも単にからだが重いのか。
キジ鍋があるくらいだから、それなりに肉づきのよい鳥なんだろうとまで想像し、
そういうことならば、仕方がない。
キジたちの日々の無事を願った日。
・枝に鳥影
花も葉もない今時期は、枝にとまる鳥の姿があらわに見られて野鳥好きにはありがたい。
だがしかし、初級レベルの鳥好きなので、その姿だけでは、その声だけでは君らのうちの誰であるかを同定できぬ。さらに言えば、
枝にとまる鳥の多くは太陽に限らず、空の眩しさを背にしていて
逆光の中にいられるだけで一切合切、色がわからぬ。
昨日も見かけない鳥がとまっていたので目を凝らしたが、さみどりがかったその鳥影が
朝の光によるものか、羽根の光沢によるものか。結局どちらなのか迷っているうちに飛び去ってしまった。
梅にウグイス、竹にツバサ、松にツル。かっこよく言えば、そう、枝にトリ。