毛むくじゃらの効能

昨晩は、21時からオンラインミーティングが始まり、0時近くまでかかった。

いよいよ来週末ということもあって、会議も佳境である。

前職の性(さが)でもあるし、元来のコレクター偏執気質もあると思うが

当日のタイムスケジュールなど運営の穴をクリアにするためによくしゃべり、頭を使った。

 

風呂も済ませていることだし、さて、寝るかとそのまま寝床に入る。時刻はまもなく1時である。

ところがである。

脳がまだしゃべり続けている。非常に元気でやめどもやめども私の意志とは裏腹にオートマティックに考え続けている。

あれやこれやその他の気になる小さな点まで、オートセンサーで追及する。

冴えわたるどころの話ではない。夜月を炎天下と勘違いしているかのようなフィーバーぶりである。

眠れない…。

不眠症とは一切無縁の人間だが、ちょっとこれは…と思う。

 

仕事部屋のベッドを起き出し、階段をおりて、2頭の犬たちがいる寝室へ向かう。

暗がりの中、床で寝ている穂の名を手探りで探す。いつもこのへんに…いたいた。

腹のあたりか尻のあたりかはわからないが、とにかく本能的に顔をうずめる。

8才の犬の呼吸音と、横隔膜の平和的なふくらみとしぼみを手の平に感じ、私の胸まわりの筋肉がゆるむのを感じる。

そのまま寝室のベッドへからだをはこぶとアウラがすやすやと眠っている。

まるで人間の子どものように、無造作から生まれた布団のくぼみにしっかり自分のからだをうずめて。

その心地よいたまらなさをすっかり心得ているくまである。

となりで私がふとんを被ると、少しだけ起きて私の顔をぺろぺろぺろぺろ気が済むまで舐め

それから、ふしゅうーーーーーーーーーぅと大きな息をついて、また眠りへ戻った。

大きな寝息になんだかすごく安心する。

 

ベッドの下で、横たわる穂の名が身動きしている音が聞こえる。

穂の名は撫でてほしいとき、自分の両前肢をあわせて拝むようにして自分の顔を擦る仕草をする。

おそらくその音だろうと思い、どの毛の部分かは知れないわからないが

手の指先の届く先まで撫でてやる。その間に、

アウラは体勢をぐるりと変えて、私の方に大きい丸めたおしりを向けた。

 

私は吸い寄せられるようにむにむにむにっと毛むくじゃらのそれに顔を近づけて、アウラのおしりのちょうどよいかたさのお肉を堪能し、顔中にかかる毛のこそばゆさをさらに欲しがり、童心にかえって擦りつける。

かたわらでは穂の名がぐーすかいびきをかき始めた。

犬の寝息に自分の寝息を重ねる。脳はさよなら。からだの力が抜けてゆく。

目覚めたら、朝だった。