フィールドワーク(T川地区 2)

 

したため。つづき。

T川の集落。祖父母から聞いた話で興味深いのは、かつて、ここら一帯にはからむし畑があったということ。

からむし。イラクサ科の多年生植物。ざっくり言えば、麻である。※「からむし日記」の中で詳らかにしているのでここでは割愛。

現在、この集落は田んぼと畑の面積が大半を占める。祖父母のようにミニトマトやその他自家栽培用の野菜のためのビニルハウスが数棟あるが、それらの一部は昔のからむし畑をつぶして始めたものらしい。

無論、今でもからむしはある。段に連なる田んぼや畑をとりかこむように残され、野生化している。からむし畑と暮らしていた当時は生育から栽培、刈取、繊維とり、加工…などと逐一、里の人々の手がかけられていたのだろうが。今では忘れ去られた生活の名残を自ら語るかのように、田と田をつなぐ日当たりのいい斜面にただ生えている。季節に逆らうことなく、自然のままに実直に。

ちなみに、同じイラクサ科にアイコという植物もあるが、これは人里の生活にはなじまない。実際に触れ、からむしと同じ行程で繊維をとってみるとその理由がよくわかる。野性的なのだ。

からむし畑は正確にはどこらへんにあったのかと祖母に問うたことがある。けれども、若かりし祖母がここに嫁いだときにはもうほとんどなかったからわからないと言われてしまった。それもそうか。この集落でからむしをやっていた最後の一人が私の曾祖母だとかねてより聞いていたのでそれほど驚かなかった。

曾祖母より下の世代は、時代や、自身の生活が求める生きるための必需をこのからむしに見出さなかった。それだけのことだ。

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